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 レストアを完了した発動機


 レストア中のスナップ   写真をクリックしてみてください

  塗装前の本体  シリンダーヘッド    はずみ車    バルブ    マグネト
   ピストン     内部    カバナー   キャブレター   自作パッキン
バルブの研磨  塗装後の本体   組み立て後     銘板     ヘッド部

私のところへやって来た時は、上の写真のようにみすぼらしいかっこうでした。はずみ車を持って回すと、少しピストンの抵抗があり、圧縮は弱いもののなんとかなりそうな感じでした。幸いなことに欠品がありません。50年も前のものですから、欠品があると部品を手作りしなければなりません。銘板は真鍮製で真っ黒になっていましたが、共和農機製作所と読み取れました。

先ずキャブレターからはずします。ボルトは錆び付いているので折れないようにCRCを吹きつけ、充分浸透してからの作業です。折れたら近くの日曜大工センターで、というわけには行かないのです。ねじの切り込みのピッチが違います。次にシリンダーヘッドを抜き取ります。これも、太いボルトが4本、ヘッドを貫通しています。ヘッドをはずすとバルブの周辺、ピストンの頭にはびっしりと50年間のカーボンがついています。次にピストンのコネクティングロッドをはずし、ピストンを抜いてしまいます。そして、はずみ車の軸受けのメタルの押さえをはずし、はずみ車を取り除きます。この時注意しなければならないのは、マグネトとシャフトとプッシュロッド機構部の3つの歯車の噛み合っている位置です。これを記憶しておかないと、吸入−圧縮−爆発−排気のタイミングが取れなくなります。新しい発動機の歯車には、合わせマークが打っているものもあります。カバナーのカバーもはずします。そうしてバラした部品は石油に浸け、ブラシでこすり、徹底的に錆と汚れを取り除きます。真っ黒になった石油パンの底に、小さな部品が残っている時があり、無くさないようにしなければなりません。石油で洗った後は、エアダスターで吹き飛ばします。時々、部品ごと飛ばしてしまい、小さな部品を見つけるために何時間もかけたことがあります。何しろ、作業場は半分外で小石もあれば草も生えています。錆落としには恰好の場所なんですが・・・・。

本体は木台と4本のボルトで固定されています。その木台は短い木台を井桁に組み合わせて、更に長いボルトで固定しています。
本体の下には、燃料タンクがあります。錆ついてあちこち穴が開いています。はずした木台は洗剤とたわしで汚れを落としますが、少しのことではきれいになりません。なにしろ、50年間、あちこちの田んぼで泥だらけになり、こぼれた油にまみれ、雨風を凌いできた木台です。炭化した籾がこびり付いています。

木台を洗い、穴の開いた燃料タンクを修理した次は本体です。本体の色は、少し明るい空色が残っています。クランクのカバーはアルミ製で色が全くはげてしまっています。このまま整備しても、みすぼらしさは拭えません。そこで、艶のない落ち着いた緑色を塗ることにしました。先ず下地処理のため、ハンドグラインダーにワイヤのカップブラシをつけて、錆落としです。これがなかなか手間がかかります。細かい、奥まったところはカップブラシが入りません。飛び散った塗料の粉と錆の粉で、身体中茶色になります。それと抜け落ち、飛び散ったブラシのワイヤが服のあちこちに突き刺さってチクチクします。

ヘッド周りはカーボンを落とした後、バルブの摺り合わせをします。これをやっておかないと圧縮漏れを起こしたりして、馬力が出ません。ドリルの先にマイナスドライバーを付け、バルブのマイナスの凹みに合わせ、摺り合わせ面に研磨剤を着けて回転させます。材質が硬いのでなかなか密着しません。また、オイラーとかカップグリスの蓋、燃料コックのつまみやレバーなどは真鍮製なので汚れを落とした後に、ドリルの先に真鍮ブラシをつけたものでパフをかけます。すると、真鍮独特の輝きを取り戻します。銘板も同じです。ボルト1本、小物品は手間を惜しまずに磨きあげないと、仕上がりの見栄えが悪くなります。

パッキンですが、大体は紙製が多く、キャブレターの物などはうまくはずさないと使い物になりません。耐油ゴムシートをコンパス付きのカッターで丸く切り取り、ポンチで叩いて作ります。

マグネトは、蓋をあけて軸受け部のグリスを交換後、コンタクトを磨きます。強い大きな火花が出ないと、後で苦労することになります。コンデンサが不良の場合は大変です。最後にプラグを付け、歯車を回転させて大きな火花が出ることを確認します。

最後は元通りに組み立てます。「元通りに」です。これがなかなか簡単なことではないのです。「本当の元の状態」がわかっていないからです。微妙な調整が必要となります。グリスカップに新しいグリスをねじ込み、オイラーにオイルを入れ、燃料と水を入れます。水漏れ、オイル漏れ、圧縮抜け、タイミングの確認等をして試運転になります。さあ動くか緊張の一瞬です。その時、カバナーのロッドの位置と回転が適正になるようにナットを前後させます。ここまでくれば、ほぼレストア完了です。そしてめでたく回り出した時は、Congratulation ! です。後は排気音を楽しむばかりです。やっと完成しました。

    大阪堺市
(株)共和農機製作所
   No.20336
     2馬力
    700回転
  昭和24年9月製造

発動機のレストア
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